会員提供の新刊情報


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金田平一郎著/和仁かや監修『近世民事責任法の研究』九州大学出版会、全386頁、2018年9月、6200円+税。
日本近世法制史学の礎を築いた故金田平一郎氏(九州帝国大学法文学部/法学部教授)が1949年の逝去直前に提出した学位論文。徳川幕府の法制度が債権の担保に如何なる姿勢を示していたかを様々な角度から考察し、前近代日本における債権法制度、ひいては民事責任の全体像を緻密かつ明晰に描出する。著者の集大成的な研究成果でありながら、未公刊かつ学界関係者の間でも長らく存在自体知られて来なかった大著であり、いわゆる「法科派」法制史学の真骨頂ともいえる1冊。目次等はここを参照。(情報提供者:和仁かや:2018-08-24)
高谷知佳・小石川裕介編『日本法史から何がみえるか 法と秩序の歴史を学ぶ」(有斐閣、2018年03月刊、342ページ、定価 2,916円(本体 2,700円))ISBN 978-4-641-12597-1

参照リンク(http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641125971

内容紹介
    日本法史(法制史)の新しい学習テキスト。
    古代から近現代に至るまで,どのように法や秩序が形成され,またその実態はいかなるものであったか。
    それぞれの時代における法の生きた姿を、法制史・歴史学・法社会学・実定法など、多様な分野の研究者が参加して解き明かそうとする一冊

目次
  日本法史への招待(佐藤雄基)
  第1部 古代・中世
      はじめに(佐藤雄基)
      第1章 古代における法と礼(桃崎有一郎)
      第2章 古代法と律令(佐藤雄基)
      第3章 中世の法典──御成敗式目と分国法(佐藤雄基)
      第4章 中世における法と礼(桃崎有一郎)
      第5章 中世社会の秩序(高谷知佳)
  第2部 近世
      はじめに(谷口眞子)
      第1章 近世国家の基本構造と自力救済の変容(谷口眞子)
      第2章 法と礼の整備と可視化される秩序(谷口眞子)
      第3章 近世社会と法(丸本由美子)
      補章 過去の法へのまなざし──日本法史学史(佐藤雄基)
  第3部 近現代
      はじめに(小石川裕介)
      第1章 近代における社会変動と法──収斂と変異(久保秀雄)
      第2章 法教育と法学の始まり(小石川裕介)
      第3章 帝国日本における植民地の法(岡崎まゆみ)
      第4章 近現代における司法と政治(見平典)
  法史から現代の法へ(酒巻匡)/これからの学習のために(丸本由美子)

(情報提供者:高谷知佳:2018-03-08)
北康宏著『日本古代君主制成立史の研究』(塙書房、650頁、2017年2月28日、本体12,000円+税)
 日本法制史の世界では古代の研究は少なからず特有の世界を形作ってしまっている。それは、律・令・格・式などの素材が豊かで、国学の伝統のうえに公法的な研究を進めるだけでも課題が山積みであったからであろう。その結果、裁判制度などの研究を除けば、中世以降の法制史的研究との断絶がいまだに埋められていないように思われる。本書は、そうした状況を意識しつつ、広い視野から日本の国制の特質に目を向けている。なかでも、中田 薫の祖名相続論をふまえつつ、日本古代の氏や家の特質について多様な素材を用いて切り込んでいる点は興味深い。さらに、終章では、中世における家や国制との連続性を模索しつつ、近代の家族国家論が誕生する淵源についても言及しており、たいへん示唆的である。古代を中心とする実証的な研究からなるが、中田の人物史研究を長年にわたって進めておられる著者だけに、法制史的な大局観と私法的関心が全体に通底しており、魅力的な叙述になっている。また、法制史・国家史のみならず、思想史学・美術史・考古学に及ぶ素材を積極的に取り上げており、学ぶべきことが多い。
(情報提供者:いわたまゆこ:2018-01-17)
小野博司・出口雄一・松本尚子編『戦時体制と法学者 1931〜1952』(国際書院、413頁、2016/3/20、本体5,600円 + 税)
2010年に結成された「戦時法研究会」の約5年間の共同研究の成果を一書にまとめたもの。
第1章「戦時法/戦時法学研究の諸前提」において、「戦時法」の研究の可能性と射程について様々な方法論からの視角を踏まえて提示し、第2章「戦時法/戦時法学の諸領域」において、公法学・私法学・刑法学・経済法/社会法の各領域の法学者の営為について検討を行った。
編者を除く執筆者・訳者は以下の通り(掲載順)。
小石川裕介・岡崎まゆみ・井上茂子・雨宮昭一・水林彪・三橋陽介・伊藤孝夫・三成美保・中山竜一・岩井淳・荒邦啓介・ミヒャエル・シュトライス・周圓・宇野文重・坂井大輔・高橋裕・林真貴子・児玉圭司。
詳しくは、国際書院HPを参照いただきたい。
(情報提供者:出口雄一:2016-07-07)
深貝保則・戒能通弘編『ジェレミー・ベンサムの挑戦』(ナカニシヤ出版、412頁、2015/02/28、本体5,600円+税)
内外の研究者によるジェレミー・ベンサム(1748-1831)についての研究論文集です。
19世紀におけるイギリス国教会とベンサムの対立、イギリスの監獄制度とベンサムのパノプティコンといったテーマとともに、
何禮之、島田三郎、陸奥宗光らによる明治期のベンサムの翻訳事情や、明治から大正にかけてのUtilityの訳語論争などについても扱っております。
研究者の方々へのベンサム研究へのコンパニオンという性格もございます。
是非、手にとっていただきたく存じております。
版元HP(情報提供者:戒能通弘:2015-04-25)
奥村郁三著『日本史上の中国――金印・那須国造碑・飛鳥・新律綱領・令集解』(阿吽社、278頁、2015年2月28日、価格8000円+税)
中国文化が日本文化へどのような影響を与えていたのかということについて、金印の読みの問題から近代法の形成における中国律令法の影響など、
具体的な事例を中心に解読を試みた。また、方法論としては、日本史上に顕れた中国文化を法などの原理を比較するという手法で詳細に提示している。
阿吽社HP(情報提供者:小笠原正仁:2015-03-25)
牧英正著『身分差別の制度化』(阿吽社、296頁、2014年7月30日、価格8000円+税)
近世身分制の形成過程と制度しての終焉を表題の論稿をはじめとして一冊に収録した。
江戸幕府の支配では、まずは前例が尊重され、争いがあって訴訟となり裁許があると判決が積み重ねられて制度が構築された。
延享年間(1744〜48年)に、非人頭車善七らは 穢多頭淺草弾左衛門以下を手下にしたいと願い出た。しかし評定所はこの訴えを退け、逆に弾左衛門の非人頭以下に対する支配を確認し、願い出た関係者を死罪とした。この年から非人たちは弾左衛門に、規律を守ることを誓う「年証文」を提出することになった。こうして江戸幕府のもとでは弾左衛門右衛門の支配が確立した。著者は、この訴訟を日本の部落史のエポックであったと考える。
幕府の大名たちへの権力が相対的に強まった江戸中期以降、大名たちは、領内の穢多・非人に対する扱いについても伺をたて、幕府の機関はこれに答えた。これらの問答は書写されて流布した。こうして幕府の賤民制度は全国化する。
本書は、著者の法制史研究の立場から、江戸時代の身分差別制度形成の過程解明に正面から挑んだ所産である。
阿吽社HP(情報提供者:小笠原正仁:2014-08-23)
所功編『日本年号史大事典』(雄山閣、806頁、2014年1月25日、12000円(税別))
所功『年号の歴史』を継承し、発展するかたちで企画された本書は、総論として所功「日本年号の成立と展開」、各論として所功・久禮旦雄・五島邦治・吉野健一により「大化」から「平成」まで全ての年号の使用期間・読み方・出典・改元理由などを通覧できるようにした。
コラムでは日本の年号に関するトピックや東アジア諸国での年号の使用の実態などを記した。また改元詔書集成や関連文献リストを史料として、橋本富太郎作成による中国・日本を中心とした東アジアの年号の使用を年表にまとめ、付した。
いずれも史料・先行研究などに明確な根拠を持つ内容を、わかりやすく記すことに努めたもので、今後の年号・改元研究の出発点となると考える。
現代的関心からもひもとかれることを希望したい。(情報提供者:久禮旦雄:2014-03-28)
牧英正『差別戒名の系譜――偽書「貞観政要格式目」の研究』(阿吽社、177頁、2014年3月1日、価格1500円+税)
仏教界における差別として取りざたされてきた差別戒名の手引書「貞観政要格式目」の研究の決定版。阿吽社HP(情報提供者:小笠原正仁:2014-03-27)
石岡浩・川村康・七野敏光・中村正人『史料からみる中国法史』(法律文化社、240頁、2500円(税別))
現代日本の研究者による中国法史の教科書は、仁井田陞、島田正郎、布施彌平治などの先学によって編まれたもの以来、40年もの長きにわたって刊行されてこなかった。本書は、通史的叙述を法典編纂史と刑罰史にとどめ、課題追究的な法領域別叙述を中心にしている。史料を口語訳で提示し、振り仮名を多めに附した「です」「ます」調文体で横組みとするなど、当代の学生にとっての「わかりやすさ」「親しみやすさ」を追究した、2010年代に即した新たな教科書である。(情報提供者:川村康:2012-03-25)
黄源盛纂輯『大理院民事判例輯存』(元照出版有限公司及び犂齋社・全11冊・70000元)
黄源盛氏の十数年に亘る大理院民事判決原本整理作業の集大成たる史料集が完結し た。先に民法総則編を紹介しておいたが、改めて全容を以下に示す。 収録判例数は總則編171件、債權編508件、物權編264件、親屬編286件、承繼編163件の計1392件である。總則編刊行後出版社が犂齋社に変更されたが、基本的な体裁は同じである。債權編以下には各巻に判決原本の影印数件、導言が付されている。民事に関する主要な大理院判例が全文公開され、北洋政府期の判例研究の確固たる基盤が据えられたことはまことに慶賀すべきことである。中華民国史研究を行う上で必備の基本資料集となることは疑いないであろう。(情報提供者:西 英昭:2012-03-05)
黄源盛總編輯『大理院民事判例輯存 總則編』元照出版有限公司、2+14+4+54+865+7頁、2012年2月、7000元
黄源盛氏の十数年に亘る大理院判決原本整理作業の集大成ともいうべき史料集。今回刊行されたものには民法総則編に関する大理院判例171件が全文収録されており、冒頭には導言として編纂の経緯や史料内容の解説も付されている。主要な大理院判例が全文公開されたことで、中華民国法制研究が飛躍的に進展することが期待される。また本書は、法制史のみならず中華民国史研究を行う研究者が必ず手に取るべき基本資料集のひとつとなるであろう。判例本体にはすべて新たに句読点が施され、非常に利用しやすくなっていることも本書の重要な貢献と言える。民法の残りの各編、刑法についても以下続刊の予定とのことである。期して待ちたい。(情報提供者:西 英昭:2012-03-26)
姫嶋瑞穂『明治監獄法成立史の研究』成文堂、全324頁、2011年11月、6825円。
明治5年「監獄則」から明治41年「監獄法」に至る近代日本監獄法の展開を条約改正交渉と関連付け、新たな視点からアプローチする。「行刑の国際化」と「日本型行刑」の調和に向けた監獄法の立案・修正について検討し、日本近代法体系において監獄法がどう位置づけられるのか新たな見通しを提示する。目次等はここを参照。(情報提供者:姫嶋瑞穂:2011-12-06)
黄源盛『民初大理院與裁判』元照出版有限公司(台湾)、x+7+431頁、2011年3月発行、680元
中華民国北洋政府時期(1912〜1928年)に最高裁判所としての機能を果たした大理院を巡る最新の研究論文集。黄氏は中華民国法史研究の第一人者であり、本書は中国近代法史研究を進める上で避けて通れない重要な基本研究の一つとなるものである。全体は「導論−從大理寺到大理院」「民國初期大理院」「大理院司法档案的整編與研究」「大理院民事審判法源探賾」「大理院裁判中的民事習慣」「大理院關於誠信原則的法理運用」「大理院刑事程序判決述評」「附編−平政院裁決書整編與探討」「總結」の全9章からなる。
なお同氏の編纂にかかる関連の史料集として
・『平政院裁決録存』(五南図書出版股份有限公司、1324頁、2007年発行、3500元)
・『景印大理院民事判例百選』(五南図書出版股份有限公司、1017頁、2009年発行、5000元)
・『晩清民國刑法史料輯注』(上下2冊、元照出版有限公司、36+36+1698頁、2010年発行、6000元)
がある。いずれも中国近代法制史研究を行う上での必備の基本資料集である。(情報提供者:西 英昭:2011-10-05)
浅古弘・伊藤孝夫・植田信廣・神保文夫編『日本法制史』青林書院、2010年8月刊、484頁、3,990円
昭和50年版・平成5年版のあとを引き継ぎ、古代から現代(平成期)までをカバーする日本法制史教科書の最新版。執筆者;梅田康夫・長谷山彰・西谷正浩・西村安博・植田信廣・畠山亮・安竹貴彦・山中至・神保文夫・小澤隆司・浅古弘・小柳春一郎・伊藤孝夫(情報提供者:伊藤孝夫:2010-08-27)
後藤新八郎著『統帥権独立の中の法制研究 日本海軍の軍令』(全786頁。 平成21年、私家版)
前書きによれば「本書は、日本海軍における統帥権独立の領域内において生い立った諸命令を探り、その特殊な立法制度の実態を解明しようとするものである」。編別は「前編 軍令総論研究 第一章 軍令と統帥権の独立 第二章 軍令の制度的考察: 後編 軍令各論研究 第一章 統帥命令 第二章 作戦命令 第三章 軍政命令」からなる。
本書は私家版ですが、元会員・後藤新八郎氏より学会事務局宛に、希望する会員宛に自由に配布して貰いたい旨のお申し出と共に、10冊の寄贈を受けました。そこで本書を希望する会員(先着十名)に対し、送料希望者負担という条件で、本書を事務局より無償でお送りすることに致します。配布を希 望する方は、2010年8月末までに、 法制史学会事務局 宛てに、下記のメールをお出し下さい。
subject:『日本海軍の軍令』配布希望
本文:『日本海軍の軍令』を、送料着払いで送付して貰うことを希望します。
送付先住所氏名:
送付先電話番号:
(情報提供者:寺田浩明:2010-07-05)
国立国会図書館「日本法令索引」(平成16年6月7日公開、平成22年5月10日リニューアル)
公文式(明治19年勅令第1号)以降の法令の索引情報(法令名、公布年月日、法令番号、改廃経過等)と、帝国議会・国会に提出された法案の索引情報(件名、提出回次、種別、提出番号、提出者、審議経過等)のデータベース。国の機関がインターネット上で提供している法令・法案の本文(条文)情報へリンクし、参照することができる。また、国会に提出された法案については、国立国会図書館「国会会議録検索システム」へリンクし、法案が審議された会議の議事内容を参照することができる。 (情報提供者:出口雄一:2010-06-24)
『法史学研究会会報』第14号(2010年3月刊、205頁、2800円。 入手方法等については、法史学研究会HPを参照)
【論説】村上一博「旧商法の公布と中外商業新報」(上)/陶安あんど「上海図書館所蔵の薛允升『唐明律合刻』手稿本について」/落合悠紀 「漢初の田制と阡陌についての一試論―漢「二年律令」田律246 簡の理解をめぐって―」/ 【講演】島善高「近代日本の天皇制度――その制度的特徴――」/ 【叢説】宮部香織「律令「条文名」覚書」/高塩博「寄場奉行一覧稿」/瀬賀正博「落語「鹿政談」に見る名判官像」/頼松瑞生「戸川貞雄の通俗小説にみる法律観念」/鈴木秀光「台湾における清代法制史関連史跡の探訪―官方関係を中心として―」/岩野英夫「シリーズ「聞き書き・わが国における法史学の歩み」の周辺」/ 【学界動向】/岡野誠・服部一隆・土肥義和・川村康・石見清裕・荒川正晴・石野智大・三橋広延・十川陽一・江川式部「天聖令研究の新動向――『唐研究』第14巻(天聖令特集号)に対する書評を中心として――」 / 【文献目録】岡野誠・服部一隆・石野智大[編]「『天聖令』研究文献目録(第2版)」/江川式部「南北朝隋唐期礼制関連研究文献目録(中文篇2/2001〜2009年)」/ 【書評】梅田康夫「小林宏『日本における立法と法解釈の史的研究 第1巻』」/岩谷十郎「島善高『律令制から立憲制へ』」/島善高「村上一博・西村安博編『史料で読む日本法史』」/長沼秀明「村上一博編『日本近代法学の先達 岸本辰雄論文選集』」/松田恵美子「西英昭『《台湾私法》の成立過程』」/西英昭「高漢成『簽注視野下的大清刑律草案研究』」/西英昭「後藤武秀『台湾法の歴史と思想』」/小室輝久「北野かほる監訳『オックスフォード ブリテン諸島の歴史 5 14-15世紀』」/ 【追悼文】岡野誠「弔辞(島田正郎先生のご葬儀において)」/小林宏「若き日の利光三津夫博士」/池田温「滋賀秀三先生追悼文」/ 【Event】Teruhisa KOMURO "Learning Japanese Law in English-- Meiji University Law in Japan Program" (情報提供者:小室輝久:2010-06-09)
山中永之佑監修/山中永之佑・ 藤原明久・ 中尾敏充・ 伊藤孝夫編『日本現代法史論 近代から現代へ』法律文化社、2010年3月刊、330頁、3,360円 法律文化社HP
明治維新期から現代に至るまでを各法分野に分けて叙述する。特に現代の法体制 の起点として戦後の「民主的」法改革を捉え、現代法からみて、各法分野がどの ような変遷を経てきたのかに重点を置く。 執筆者;山中永之佑・藤原明久・藤田正・出口雄一・小野博司・中尾敏充・居石 正和・白石玲子・三阪佳弘・田中亜紀子・菊山正明・林真貴子・高橋良彰・小柳 春一郎・近藤佳代子・高倉史人・伊藤孝夫・岩村等・石川一三夫・坂本忠久・中 野目徹 (情報提供者:伊藤孝夫:2009-04-21)
中世後期研究会編『室町・戦国期研究を読みなおす』2007年10月刊行 思文閣出版 420頁・4830円。 思文閣出版HP
東西の若手研究者13名による、80年代以降の南北朝〜戦国期の最新の研究状況を概観し 、新たな展望を示す論文集。政治史(公武関係、都鄙関係)・社会史・経済史・宗教史 など、多岐にわたる分野を網羅し、繋ぎ合わせる。 政治史については、松永和浩「南北朝・室町期における公家と武家 ─権限吸収論の克 服─」、 桃崎有一郎「室町殿の朝廷支配と伝奏論 ─〈公武統一政権〉論の再考に向 けて─」、山田徹「南北朝期の守護論をめぐって」、吉田賢司「室町幕府による都鄙の 権力編成」、平出真宣「戦国期政治権力論の展開と課題」、尾下成敏「織田・豊臣政権 下の地域支配 ─「一職支配」論の現在─」、 社会史については、西島太郎「中世後期の在地領主研究」、清水克行「習俗論としての 社会史」、三枝暁子「中世後期の身分制論」、 経済史については、早島大祐「ものはもどるのか ─中世の融通と徳政─」、高谷知佳 「比較中世都市論への視点 ─西欧・イスラム・日本─」、 宗教史については、大田壮一郎「室町幕府宗教政策論 ─戦国期宗教勢力論─」、安藤 弥「戦国期宗教勢力論」など。 (情報提供者:高谷知佳:2007-10-11)
『法史学研究会会報』第11号(入手方法等については、法史学研究会HPを参照)
【論説】北宋天聖雑令中の水利法規について(岡野誠)/律令国家と医学テキスト――本草書を中心に(丸山裕美子)/戦国秦の良民の「大」「小」区分と身長六尺――未成年に科す実刑と未発達な贖制度の関係(石岡浩)/【研究ノート】騎馬軍団と駅伝制度の存在しなかった邪馬台国(上野利三)/『唐六典』と『令義解』に見える「五聴」(三橋広延)/黒田徳三郎『条約改正要論』刊行の背景(長沼秀明)/大庭青楓『悲哀小説志ほ煙』にみた法律問題(頼松瑞生)/『二年律令』から見る前漢初期の南郡の南界(落合悠紀)/瀧川政次郎氏購入の司法省所蔵漢籍(島善高)/【講演】明治法律学校と仙台、そして布施辰治(村上一博)/【随想】小早川欣吾先生記念メダルによせて(吉原丈司)/ロンドン通信(1)(小室輝久)/【研究情報】台北における図書館・文献検索情報(西英昭)(情報提供者:村上一博:2007-05-23)
西英昭「東京大学法学部図書館の漢籍、及び台湾関係資料について」、滋賀秀三「比附と類推」、西英昭「岡田朝太郎著作目録(稿)」『東洋法制史研究会通信』14号(2005)・15号(2006)
『東洋法制史研究会通信』選編(同雑誌のWEB版)に上掲論文が新たに追加された。その他に、編集部「《資料》東洋法制史研究会25年の歩み」も掲載されている。(情報提供者:寺田浩明:2006-09-12)
池田利昭「研究動向 中世後期・近世ドイツの犯罪史研究と「公的刑法の成立」−近年の動向から−」『史学雑誌』114編9号、1556〜1579頁、2005年9月
1980年代末から、ドイツでは、社会史的アプローチによる前近代の犯罪史研究が盛んに進められており、その成果がさまざまな歴史理論(たとえばコミュニケーション論や社会的紀律化論)に影響を与えるようになってきている。本稿はまず、このテーマをめぐる研究動向を整理し、次に法史学からのアプローチとしての、研究プロジェクト「公的刑法の成立」を紹介。戦後ドイツ史学における代表的方法論としての社会史研究と、法制史において後進性を指摘されてきた刑事法史、それぞれの展開をまとめて俯瞰する。(情報提供者:松本尚子:2006-05-08)
遠藤泰弘「第二帝政創立期ドイツの政治思想(1)〜(4・完)オットー・フォン・ギールケ国家論の発展とギールケ=ラーバント論争の再評価」『北大法学論集』56巻3号、1149〜1195頁、2005年9月;56巻4号、1599〜1645頁、2005年11月;56巻5号、2099〜2163頁、2006年1月;56巻6号、2433〜2482頁、2006年3月
19世紀末ドイツの代表的ゲルマニストであるギールケの法思想について、すでにいくつか業績を持つ著者が、19世紀後半の国法学をリードしたラーバントとギールケの論争を丹念に追った労作。帝政ドイツの公法実証主義を代表するラーバントと、団体法理論をもってこれに挑戦するギールケの対決は、どのような決着を見るのか。その論争は後の政治思想にとってにどのような意味をもつのか。20世紀の国家理論・団体理論研究にとっても、刺激的な内容。(情報提供者:松本尚子:2006-05-08)
河野 恵一「喧嘩両成敗法成立の法史上の意義に関する一試論─戦国大名武田氏の喧嘩処理を手がかりとして─」『九大法学』92号、1〜56頁、2006年2月。
著者の前著「自力救済とその規制──喧嘩両成敗法」〔山内進ほか編『暴力──比較文明史的考察』、東京大学出版会、2005年〕にひきつづき、三浦周行以来の「喧嘩両成敗法」研究史を綿密に再整理し、戦国大名権力による自力救済禁圧という側面をことさらに強調するこれまでの研究動向に批判を加えたもの。『甲陽軍鑑』を素材にした戦国大名武田氏における喧嘩処理の実例検討を踏まえ、今後の喧嘩両成敗法研究のあり方に一石を投じた研究として注目されよう。(情報提供者:植田信廣:2006-05-07)
籾山 明『中国古代訴訟制度の研究』(東洋史研究叢刊之六十八)京都大学学術出版会、全342+iv頁、2006年2月、4600円。
近年出土の秦漢時代出土文字史料の出土状況の検証を行ったのち、当代の裁判制度、とりわけ訊問と訴訟手続き、爰書の役割などについて克明に分析し、最後にそれら文書全体の背後にある営為を「司法経験の再分配」という形で総括する。目次等はここを参照。(情報提供者:寺田浩明:2006-05-07)
萩原 守『清代モンゴルの裁判と裁判文書』創文社、全475頁、2006年2月、14000円。
著者が1990年代から営々と進めてきたモンゴル語・満州語裁判文書の分析に基づく清朝時期モンゴリアにおける刑事裁判の実像解明の試みの集大成。第2部訳注編では、二百余頁を用いて15通の文書を全訳する。目次等はここを参照。(情報提供者:寺田浩明:2006-05-07)
山本 弘「日本中世訴訟制度における《裁許前誓約》──鎌倉幕府による濫訴対策の一側面──」『九大法学』91号、414〜469頁、2005年9月。
鎌倉幕府の訴訟制度における特異なルールとしてその存在を知られながら、主として史料的制約からこれまであまり研究されることの少なかった「堺打越」および「懸物押書」について、関連史料を渉猟し、鎌倉幕府の濫訴抑止対策という観点から検討した力作。「堺打越」や「懸物押書」自体の実態解明がこれによって大きく進んだわけではないが、鎌倉期裁判における「裁許前誓約」の機能の重要性という問題提起は注目に値する。(情報提供者:植田信廣:2006-05-07)